冷泉家時雨亭文庫だより
第十二歌雲間より星合ひの空を見わたせばしづ心なき<あまの川浪
第十一歌風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
第十歌小山田に引くしめなはの うちはへて朽ちやしぬらむ 五月雨のころ
第九歌大井川かがりさしゆく鵜飼船幾瀬に夏の 夜を明かすらむ
第八歌うちしめり菖蒲ぞかをるほととぎす鳴くや五月の 雨の夕暮れ
第七歌卯の花のむらむら咲ける垣根をば雲間の月のかげかとぞみる
第六歌見渡せば柳桜を こきまぜて都ぞ春の 錦なりける
第五歌三千年に なるてふ桃の花咲けり 折りてかざさむ君がたぐひに
第四歌梅が枝に 鳴きてうつろふ鶯の 羽白妙に淡雪ぞ降る
第三歌へだてゆく 世々のおもかげかきくらし 雪とふりぬる年の暮れかな
第二歌奥山に もみぢふみ分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋は悲しき
第一歌白露に 風の吹きしく秋の野は 貫きとめぬ玉ぞ散りける