冷泉家時雨亭文庫だより
第二十六歌冬枯れの 杜の朽葉の 霜の上に落ちたる月の 影の寒けさ
第二十五歌いつのまに 空のけしきの 変わるらむはげしき今朝の こがらしの風
第二十四歌うつろふも またひと入の 色なれや 秋より後の 露の白菊
第二十三歌山川に 風のかけたるしがらみは流れもあへぬ 紅葉なりけり
第二十二歌神無月 降りみ降らずみ 定めなき時雨ぞ冬の はじめなりける
第二十一歌神無月 風に紅葉の 散る時はそこはかとなく ものぞ悲しき
第二十歌星合ひの 夕べすずしき あまの川もみぢの橋を わたる秋風
第十九歌夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
第十八歌ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
第十七歌早苗とる 山田の懸樋 漏りにけり引くしめ縄に 露ぞこぼるる
第十六歌五月待つ 花橘の 香をかげば昔の人の 袖の香ぞする
第十五歌駒とめて なほ水かはむ 山吹の花の露そふ 井手の玉川
第十四歌袖ひちて むすびし水の こほれるを春立つけふの 風やとくらむ
第十三歌秋萩の 咲き散る野辺の 夕露にぬれつつ来ませ 夜は更くるとも
第十二歌雲間より 星合ひの空を 見わたせば しづ心なき あまの川浪
第十一歌風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
第十歌小山田に 引くしめなはの うちはへて朽ちやしぬらむ 五月雨のころ
第九歌大井川 かがりさしゆく 鵜飼船幾瀬に夏の 夜を明かすらむ
第八歌うちしめり 菖蒲ぞかをる ほととぎす鳴くや五月の 雨の夕暮れ
第七歌卯の花の むらむら咲ける 垣根をば雲間の月の かげかとぞみる