文庫だより御所北さんぽ
〜事務局こぼれ話〜

にゃん紫ものがたり3

「いや、あれは父親やで」と、貴実子が、大きい方をイクメン猫と認定しました。

野良猫たち

野良猫たちは、いつも冷泉家の東隣の同志社大学の倉庫の屋根の上で日向ぼっこをしています。

多い時で、3匹ほどでしょうか。全員茶色と白の縞々の茶トラです。時折、背中をぐーんと伸ばし、互いに毛づくろいする様子は微笑ましく、今日はどんな猫がやってきているのかと確認するのが楽しみになっていました。

冷泉家の南側は4車線の今出川通に面しており、その南には京都御苑の森が広がっています。早咲きのしだれ桜で有名な近衛邸跡の北側の森の片隅に、その理由がありました。

御苑の森で暮らすホームレスのおじさんの周りには、いつも数匹の猫たちがいました。そのうちの何匹かが、毎日、交通量の多い今出川通りを渡って、冷泉家まで通ってきていると思われました。

ひなたぼっこする猫たち

それからしばらくして、今は、北の大蔵が建ちつつある場所にあったプレハブ倉庫の外階段に可愛い子猫が見つかりました。

あまりにも可愛いので、捕まえて飼いたいという人が現れましたが、捕獲はうまくいきませんでした。

子猫のそばには、いつも少し大きな猫がいて、仲良くじゃれ合っています。2匹は母子と思われましたが、「いや、あれは父親やで」と、貴実子が、大きい方をイクメン猫と認定しました。

底冷えの京都の冬、雪の舞う日に、西村さんは寒そうな猫たちのために、段ボールと毛布を用意してあげました。

段ボールの猫たち

にゃん紫

同志社の卒業式に向かう袴姿の女子学生たちが冷泉家の桜にスマホをかざす3月が過ぎ、今出川通が新入生勧誘チラシを配る学生たちで賑わう4月のある日、小さい方の猫のお腹が大きいことに気が付きました。

京都の春を告げると言われる冷泉家の桜

手に摘みて いつしかも見む紫の ねにかよひける 野辺の若草  光源氏

少女時代の紫の上を自分好みに育てあげ、妻にした光源氏。

源氏物語5帖「若紫」の春に萌え出ずる紫草にちなみ、身重の子猫は、にゃん紫と名付けられ、オス猫は、光deにゃん(通称:光)と呼ばれることになりました。

つづく


この記事をかいた人

余田由香利

事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。

文庫だよりLetter From Shiguretei Library