文庫だより玄武町余聞

初秋の色を添えて ー織姫と彦星へー

うりなすび ももなし からのさかずきに ささげ らんかず むしあわびたい

星の祭壇を設(しつら)える

乞巧奠では、「星の座」と言う祭壇を設えます。

祭壇の内容は諸説ありますが、冷泉家では、琵琶、琴、燭台、七草、五色の糸と布、梶の葉、等々…それと、うり、なすび、もも、あわび、鯛等の山のものと海のものを併せてお供えします。

桃や梨などの食べ物は二星それぞれに手向けるため、すべて対にして準備します。

らんかず(フライビーンズ)
かわらけにお供えを載せる
ささげ
五色の糸

ささげはいんげんとよく似た形をしてるマメ科の植物で、長さが30~50cm、長いものでは100cmにもなります。ここでは若いうちに摘んで、さやごとお供えします。

このささげ、最近ではあまり見なくなってしまい、年々手に入りずらくなっています。

京都では伝統野菜として特別に栽培しており、もともと地蔵盆の時期に最盛期を迎えるものでしたが、近頃では夏の猛暑に耐えかねて、育ちにくくなっているそうです。

また、他のお野菜や果物、朝顔などの草花もこの温暖化により収穫時期がずれてしまい、旧暦の七夕のお供えとしてはなかなか簡単には揃いません。

秋の七草

他にも、絹の糸や布を庭に吊り、角盥(つのだらい)には梶の葉を浮かべます。冷泉家では、七夕で使うため、梶の木を庭に植えて大切に育てています。

他の植物も少しずつ庭に植えているのですが、酷い暑さのせいか、今年はお供えに使えるほど綺麗に咲かなかったものもあります。

燭台や庭の石灯篭には火を灯します。燭台に使う油も、今では一般的ではなくなりました。

こうして少しずつ、儀式に使うお供えや道具、材料などが集まりにくい時代になってきました。

ですが今年は様々な方のお力添えを得て、すべてを用意することが出来ました。

色々な方に声をかけると、皆さまが一生懸命に伝統を守るため動いてくださる。京都の町の力だとつくづく感じました。

燭台と和ろうそく

乞巧奠の儀式の様子はこちらの記事をご覧ください

この記事を書いた人

野村渚

学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
ここでの勤務はまだ1年のひよっ子。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。

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