文庫だより御所北さんぽ
〜事務局こぼれ話〜

紫陽花事件

冷泉家の花は和花です

ある梅雨の日のできごと

冷泉家の上の間、広間の床には、いつも美しい生花が生けられています。
季節に合わせ、バラやチューリップのような洋花ではなく、和花を心をこめて生けています。

今年も、梅雨の時期から蒸し暑さが続き、花が長持ちしないので、担当スタッフは、とても苦労しています。
先週のこと、近所の花屋さんに注文した紫陽花が、案の定、暑さであっというまにしんなりしてきました。
スタッフの吉見さんは、庭の松ノ井の手水鉢の冷たい水にしんなりした紫陽花を浸すことにしました。
長時間冷たい井戸水に浸けておくと上手く水揚げできるのです。
ちょうど同じ日、庭師さんが庭木の手入れに入ってくださっていました。
夕方、そろそろ花を生けようと、紫陽花が元気になっていることを期待しながら吉見さんが手水鉢を見ると、紫陽花は、フォトジェニックな花手水に仕立てられていました!
手水鉢の中のしおれた紫陽花は、庭師さんのご好意で、茎が全部切られ、最近流行りの花手水に仕立てられていたのです。

えーーーー!!!!」と思わず叫んでひっくり返りそうになった吉見さん。
「床の間の花はどうしたらよいのか…」

花手水は、コロナ禍に寺社で手水が使えなくなって各地に広まりましたが、もともと“眼病平癒の祈願所”として平安時代から信仰されてきた京都府長岡京市にある柳谷観音楊谷寺(やなぎだにかんのんようこくじ)で行われていたそうです。
冷泉家では、この風習はありません。

可愛いお客さん

花手水に浮かんだ紫陽花は、翌日の和歌会の門人さんに「まあ!きれい!」と喜んでいただけました。
おまけに、可愛いお客さんの訪問もありました。

そして、吉見さんは、再び猛暑の京の町を、花屋さんまで自転車を走らせたのでした。


この記事を書いた人

余田由香利

事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。

文庫だよりLetter From Shiguretei Library