2月、京都府文化賞の授賞式にうかがった。この賞は、京都の文化の向上に寄与された方々を顕彰するもので、今回は42回め。桜守の佐野藤右衛門さんや染織家の小名木陽一さんが特別功労賞を、表千家の千宗左さんや洋画家の山部泰司さんが功労賞を、詩人の最菓タヒさんや能楽師の林宗一郎さんが奨励賞を、それぞれ受賞されている。かく言う私も、平成18年度、第25回の功労賞を貴実子とともに受賞している。
授賞式の後の交流会では、同じく特別功労賞を受賞された田端泰子さんとお話しをする機会を得た。田端さんは、中世史を専門とする歴史学者で著作も多く、私もそのいくつかを読ませていただいている。歴史学というのは誠に難しい学問で、ややもすると記号に過ぎない年号などに拘泥した著述に陥りがち。芸術や文化、真・善・美をも視野に入れた把握の仕方でないと本当の歴史には迫れない。田端さんは聞き書きという手法を大切にされ、その言葉から歴史に迫ろうとされておられるよう。人のこころを種とした言の葉にこそ、歴史の本旨は潜んでいるのだ。
プロフィール
冷泉為人
財団法人冷泉家時雨亭文庫理事長 第25代当主。
1984年に冷泉家の末裔である貴実子さんと結婚、婿養子に入る。
どんなに困っていても千年のプライドがあって人にものを頼むことができない冷泉家の人を知った時に「ホンマ、えらいとこに養子に来てしもうたと何度も思いましたわ」と語っている。