文庫だより玄武町余聞

重文民家の集い@兵庫県たつの市②

日本人の生活文化をつなげるために

日本人の生活文化をつなげるために

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二日目は見学です。

バスでたつの市へ移動し、堀家住宅と永富家住宅を見学させていただきました。

移動中も、参加者からその家独自の風習や、決まり事などのお話を伺いました。

さらに子供の頃には、「よその家とは違うそのあり方が、学校で浮いてしまったりして困った」「友達に、お化け屋敷に住んでいると言われた」などの、あるある話も聞けました。そのお話から、古い家に生まれてたくさんの苦労を抱えて育ったけれども、その風習や歴史をとても大切に感じ、継承していく強い意思を感じました。

堀家住宅は、元庄屋の堀家が代々継承なさった家で、現在もご当主夫妻とご家族がお住まいです(通常非公開)。

「主屋1棟、座敷2棟、蔵12棟、付属建物5棟、門3棟など、計23棟が一括して指定されています。主屋の建築年代は、史料や瓦銘によって明和4(1767)年と推定され、他の建物群も大半が江戸時代のものです。

堀家は一橋徳川家の庄屋をつとめた豪農で、敷地内にまとまって江戸時代の建物群が残る稀な例であり、全国的にも貴重です。(たつの市HPより抜粋)」

23棟もの建造物が一括して重文に指定されており、その壮大さは圧巻です。

同時に、管理の大変さが偲ばれます。

掘家住宅表門

また、家のすぐ脇にはお素麵で有名な揖保川が流れています。

この揖保川は、生活用水や運河として地域の生活に深く根付いています。一方、度々氾濫してきました。

そこで、氾濫から町を守るため、土手には特殊な堤防が付けられています。

橋の欄干のような柵を川沿いに連ねて、いざと言うときにはこの枠に各家庭から持ち出した畳をはめ込んで、堤防の役割を果たします。

その名もズバリ、「畳堤(たたみてい)」。

川の景色を守りたいと言う住民の気持ちから考案されたこの仕組みは、畳がどこの家庭にもあった昭和20年代に生まれました。このアナログな堤防は、2018年(平成30)7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の際、実際に活用されたそうです。

「畳堤」有事の際は、柵の溝に畳をはめ込んで防波堤とする

たつの市では、もう一件、永富家住宅を見学しました。

永富家住宅

こちらも元庄屋の家柄で、二階建て、本瓦葺きの巨大な農家風建築です。

門前に広がる付属庭園の秋恵園(しゅうけいえん)ではちょうど花菖蒲が美しく咲き誇っていました。

今回の会合でも、その土地、風土に見合った歴史と文化があり、それが日本の多様性を育んできたことを実感できました。

年に一度の集まりですが、お話や見学を通じて、文化を繋ぎ残していく決意を新たに確認しあうことが出来ました。

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この記事を書いた人

野村渚

学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。

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