文庫だより御所北さんぽ
〜事務局こぼれ話〜

にゃん紫ものがたり8

冷泉家で生まれ、ただひとり生き残った飛梅太の幸せを心から祈りました。

もらわれていく日

子猫が博多にもらわれていく日がやってきました。

猫本専門店 書肆吾輩堂の大久保さんが、新幹線に乗って、博多から子猫を迎えにやってきました。

平成28(2016)年5月17日 子猫が博多に行く日の朝に

大久保さんは猫本専門店を経営するほどの猫好きで、ゴンチャロフを亡くした後も、モジャ、ちーちー、チロの3匹の猫店員たちと暮らしています。 その日、博多にもらわれていく子猫は、貴実子によって「飛梅太(とびうめた)」と名付けられ、大宰権帥(だざいのごんのそち)という位まで与えられました。

平安の昔、菅原道真は藤原時平との権力争いに敗れ、遠く太宰府へ左遷されることになりました。そして京都を離れる日に、日頃から愛でていた梅の木に別れを告げる歌を詠みました。

東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

すると、梅の花は、道真を慕うように一夜にして太宰府に飛んで行き、太宰府天満宮では今も春一番に花を咲かせているといいます。

都を離れる飛梅太が、筑紫の地で、どうか幸せに暮らせますように、先輩猫達と一緒に元気に大きくなりますように…と、冷泉家で生まれ、ただひとり生き残った飛梅太の幸せを心から祈りました。

北野天満宮の飛梅

お祭り

5月18日は、御霊神社のお祭りです。

御霊祭は平安時代の怨霊退散を目的とした御霊会(ごりょうえ)が起源とされるお祭りで、冷泉家も門を開けて、行列を見送り、お神輿をお迎えします。

御霊祭 門を開けて御神輿をお迎えします(令和4年 御霊祭)

夕方、京都御所に入る小山郷・今出川口・末廣の三基の神輿が、冷泉家の前で掛け声と共に高くかかげられます。

お神輿を見送った後は、直会でお寿司をいただくのが習わしとなっており、この年も、冷泉家親族と事務局で、小さな宴を催しました。

爽やかな5月の夕べ、障子を開け放ち、にぎやかな宴が繰り広げられている最中、なんと、にゃん紫がやってきました。子猫を探しているのでしょう。いつも人を怖がって近寄ってこないのに、そして、もう梅太は博多に行ってしまったのに…。そう思うと、最後の子猫も失くしたというのに、母性のままに子を探すにゃん紫が哀れでなりませんでした。

そして、御霊祭の翌日、思いもかけない大事件が起こりました。

つづく


この記事を書いた人

余田由香利

事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。

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