文庫だより御所北さんぽ
〜事務局こぼれ話〜

にゃん紫ものがたり5

隠れ家のようになる隙間で、にゃん紫が子猫たちを育てているではありませんか!

とても幼い母でした。

2016年、いわゆるコロナ前、外国との行き来に制限がなく自由に出来ていた頃、京都の街はインバウンドで湧いていました。どこに行っても大勢の外国人観光客。日に何度も、2階建ての赤いオープントップバスが今出川通を走って行きます。

その年のゴールデンウィーク、冷泉夫妻は、久しぶりの休暇でチェコを訪れていました。ちょうどその留守中、にゃん紫は、屋敷の縁の下で、4匹の子猫を産みました。とても幼い母でした。
見つけたのは、もちろん西村さんでした。

その頃のにゃん紫は、目やにで顔は汚くて、毛並みはガサガサ、大層か弱く、やつれた印象でした。今のデラックスにゃんの面影は全くありません。

松ノ井の水を飲むやつれたにゃん紫

産まれた4匹は、全員茶トラでした。

そのうち2匹は、すぐ弱って死んでしまい、西村さんによって敷地内の片隅に手厚く葬られました。

気がかり

連休明け、事務所にいると、ガサゴソと背後で音がします。そっと覗いてみると、物置にしている勝手口の奥のスペースの梱包材などが立てかけてある床のちょうど隠れ家のようになる隙間で、にゃん紫が子猫たちを育てているではありませんか!

勝手口

冷泉家の事務所は、重要文化財冷泉家住宅の一角にあり、障子を隔て勝手口と繋がっています。勝手口は、雨風が凌げて、カラスからも狙われず、戸の上部と屋根の隙間は、猫の大きさなら自由に出入りできます。この安全な場所をにゃん紫は、どうやって見つけたのでしょうか。子猫を一匹ずつくわえて、塀重門をくぐってきたのでしょうか。縁の下を通ってきたのでしょうか。

しかし、ここは、毎日、郵便局や宅配業者さんが荷物を届けに来る入口でもありましたので、こんな場所で、落ち着いて子育てができるのだろうか、2匹の子猫が元気に育つのだろうかと、気がかりでなりませんでした。

つづく


この記事を書いた人

余田由香利

事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。

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