事件
動物にまつわる事件は、なぜかいつも木曜日に起こります。
御霊祭の翌日はよく晴れた日でした。木曜日は、西村さんの出勤日です。
九ちゃんこと紀州犬九兵衛は、庭の一角をフェンスで囲った中で、のびのびと暮らしており、週に4回は、花背にある犬の学校に通っているのですが、木曜日は学校もなく、家でのんびり過ごしていました。
ちょうどその日、大工の山口さんがやってきていました。九兵衛は、山口さんととても仲良しです。 山口さんが、柵の外に出るタイミングで、開いていた柵の門から外に飛び出してしまいました。
そこに日向ぼっこしていたのが、にゃん紫でした。
九兵衛は、小動物を見つけると一瞬で飛び掛かり捕らえる習性があります。
今までに、すばしっこいイタチを4匹捕まえたことがありました。お昼寝中のにゃん紫は、そんな九兵衛にかかっては、ひとたまりもありませんでした。
九兵衛は、にゃん紫を一撃、お腹をくわえて振り回しました。
山口さんは「たいへんや!九ちゃんが逃げた!」と叫び、 庭の手入れに来ていた庭師のKさんは、「犬が、猫くわえてるー!」と。
ききつけた西村さんは、咄嗟に九兵衛に飛び掛かり、馬乗りになって、にゃん紫を引き離しました。
九兵衛から逃げたにゃん紫は、必死で梶の木に登りました。庭師のKさんは、脚立を梶の木に立てかけて、にゃん紫を捕まえようとしましたが、にゃん紫はさらに上に逃げ、そのまま梶の木のてっぺんから地面に転落しました。そして、息も絶え絶えに、停めてあった車の下に逃げ込みました。
屋敷中に、貴実子の悲鳴が響き渡りました。
貴実子が、腹ばいになって手を伸ばし、車の下からにゃん紫を引っ張り出しました。その時点で大怪我が見てとれました。
救急車を呼びたい気持ちを抑え、タクシーで動物病院に向かいました。 もしこの時、西村さんが、馬乗りになって、九兵衛を引き離さなかったら、にゃん紫はその場で息絶えていたことでしょう。
この記事を書いた人
余田由香利
事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。