神が宿る蔵
冷泉家の年中行事は、元旦の御文庫参拝から始まります。
新年は新暦で祝います。
いつもは閉じている表門を開け、新年をお迎えします。門の上には、大きな注連縄を飾ります。
玄関、台所、座敷等々、各場所に正月飾りを設えますが、なんといっても中心は、御文庫です。
冷泉家にとってもっとも重要な文書や典籍類を収めた御文庫には、神様がお祀りされています。御文庫の庇の南の柱には塩鯛を、同じ庇の南北の柱には一対の根引松(ねびきのまつ)を立てます。さらに扉には、穂長(ほなが)に譲葉(ゆずりは)と裏白(うらじろ)の葉を飾った輪飾りを吊るします。
元旦には、装束を整えた当主が、御文庫の扉の前に立ち、御文庫にお祀りした神様に参拝します。
御神饌を料理する竈には、松や鏡餅を飾ります。
かつて叔母や母達が子供だった頃には、各部屋にこうした穂長に譲葉と裏白の輪飾りを設えていたので、その数は大変なものだったと聞いています。
この記事を書いた人
野村渚
学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
この4月から勤務し始めたひよっ子。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。