文庫だより御所北さんぽ
〜事務局こぼれ話〜

西行 語り継がれる漂泊の歌詠み

五島美術館 特別展レポート

五島美術館へ

私、ドーダクン、先日東京へ行ってまいりました。普段は御文庫(冷泉家邸内にある蔵)にお住まいの
 ・拾遺愚草 下(国宝)
 ・藤原定家書状幷円勘返状(重要文化財)
 ・残集(重要文化財)
 ・曾丹集(重要文化財)
 ・小大君集(重要文化財)
 ・小色紙三筆(重要文化財)
6点が、東京の五島美術館で開催される「西行 語り継がれる漂泊の歌詠み」展にお出かけ中とのことで、展覧会を見に行ってきました。

五島美術館の最寄り駅、東急大井町線の上野毛駅から大井町線沿いを5分ほど歩き、富士見橋を渡ると、閑静な住宅街の一角に静謐な佇まいをした美術館の建物が見えてきます。

 チケットを渡して入館し、展示室へと向かうドーダクン。すると、第一展示室入ってすぐの展示ケースから、さっそく「曾丹集」が出迎えてくれました。(いや、たまたま入り口近くのケースにあっただけです…)

「曾丹集」伝 西行筆 (図録より)

 

 各地の美術館や博物館などから名品が出揃い、なかなかに見応えのある展覧会でした。ドーダクンが来訪した日は、冷泉家時雨亭文庫の所蔵品は「曾丹集」のほか、「拾遺愚草」が展示されていました。「拾遺愚草」は藤原定家の和歌集で、また。定家自筆の歌集でもあります。
 今回は「拾遺愚草」の下巻が出ていました。下巻に「西行上人、みもすその歌合と申て判すへき申しゝを」という一段があり、このときの贈答歌が記されているためです。

「拾遺愚草」下巻 (図録より)

写本ではなく自筆本

 

 日本国内には千年近く前に書かれたとされるさまざまな典籍類が遺されていますが、自筆本というのは珍しいのです。遺されているものでも、「写本」といって、もとの本を書き写したものであって、筆者自筆のものは遺っていないことがほとんどです。

 それにしても、定家さんの字は非常に特徴的なので、展示室を歩きながら、「ややっ、この字は…」もしかしなくとも定家さんの字でした。

展示室には多くの展示が並び、西行物語絵巻なども出陳されていました。西行物語といえば、西行の人生を描いた物語ですが、西行が出家する際、すがる娘を蹴落として仏門に突き進んでいこうとする場面が有名でしょうか。
 ちょうど絵巻でその場面が展示されていました。現代の視点で見てしまうと、速攻児童相談所に通報されそうな場面やなぁと、しょうもない感想を抱くドーダクン。時間軸は鎌倉時代にセットしなければいけません。かわいい娘という邪念を払い、仏門へ一心に入ろうとする西行さんの姿です。

小色紙三筆 藤原俊成筆・伝西行筆・藤原定家筆 (図録より)

会期は12月4日まで

そんなこんな、一通り展示を見終え、ミュージアムショップにも寄りました。どんな商品が出ているのだろう?とリサーチ眼になってしまい、純粋な一人の客になれないのはある種の職業病(?)です。
 来年のカレンダーなどが販売されていて、ああ、こんな商品、あんな商品我が社でも作れたらいいなぁ、と思うのですが、即時に頭の中にソロバンが出てきて、パチパチパチ。我が社では無理やな、という結論になるのが毎度ミュージアムショップの帰路のお決まり。

 こちらの展覧会は12月4日までで、会期は残りわずかです。10月のまだ暑さが残るころに京都からお出かけした拾遺愚草さんたちご一行、京都に戻ったら「さぶなってるな」と思われるのでしょうか。

 今週末までではありますが、まだ展覧会に足をお運びでない方は、どうぞお出かけください。なお、お出かけの前には、五島美術館のホームページで開館状況をご確認をお願いいたします。また、当財団の所蔵品の出陳スケジュールにつきましても、併せて五島美術館のホームページでご確認ください。


この記事を書いた人

ドーダクン(銅駝君)

最小限の労力で最低限の仕事をすることがモットーのサボり魔。ときどき高校へ出前授業をしに行っている。

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