子猫が無事に育たないかもしれない。
筑紫に下った飛梅太は、若君とも呼ばれていました。
大久保さんは、若君を猫専門の病院に連れていってくれました。寄生虫検査をし、ノミもシラミもいなかったとのことですが、眼球が奥に引っ込んだままで見えていないとのこと。
診断は重度の結膜炎。また風邪を引いていて、鼻から喉にかけての炎症があり、抗生剤を注射し、毎日の投薬治療となりました。
当時の大久保さんからのメールには、「若君ですが、いくつか問題がありまして、ミルクをぱったり飲まなくなり、また目の回復がはかばかしくないのです」と。
450グラムの体重があるのに、10㏄しか飲まないとのこと。
大久保さんは、ミルクの回数を増やし、それでも飲まないときは、ミルク+離乳食+ロイヤルカナンの高栄養パウダーを流し込んで、なんとか若君の体力をつけようと懸命でした。
ペーストは、茶杓で食べさせるのがちょうどよく、さすがにこういうところが風流で若君らしいとのことでしたが、もしかしたら良くない病気が隠れているかもしれないので、他の猫達と隔離しながら育てていますとのこと。京都の公家から貰い受けた子猫が無事に育たないかもしれない。他の猫達に病気を移してしまうかもしれない。それはどんなに心配なことであったかと思います。
静養中のにゃん紫
一方、冷泉家で静養中のにゃん紫は、ケージの中にずっと入れておくのは可哀想と、お腹に包帯をぐるぐる巻いたまま、部屋の中でゴロゴロ過ごすようになりました。
冷泉夫妻には、心を許したのか、為人理事長の足にスリスリし撫でてもらい、貴実子にも「なんて可愛い子なの!」と言われるようになった矢先のことです。
また新たな事件が起こりました。
にゃん紫が脱走したのです。網戸に丸い穴を開け、体をそこからすり抜けさせ、その際、お腹の包帯は引っかかって外れ、傷が癒えないままの姿で、外へ出てしまったのです。
にゃん紫は、朝になって庭で見つかりました。餌で引き寄せても捕まえられません。ひとりでいつもの梶の木をするすると登り、同志社の屋根の上で、光との久しぶりの逢瀬を楽しむ姿が見られました。
しかし、まだ、安静にしておかなくては。
傷口も癒えていないので、お皿に薬を混ぜた餌を置いたら、その抗生物質入りの餌を食べたのは、カラスでした。 そして、冷泉家にあったネズミ捕りに、西村さんがソーセージを仕掛けて、捕まえようとしたら、あっというまに捕まったのは、にゃん紫ではなく、光の方でした。
その傍らには、にゃん紫がおり、まもなく、にゃん紫の捕獲にも無事成功しました。
抜糸のために動物病院に連れて行くと、先生は「彼女にとっては、お庭がホームで、そこで暮らすことが一番幸せなんですよ。傷が癒えたら、お庭に出してあげて。光ちゃんを捕まえて去勢した方が良いのでは」とのこと。
血圧が急上昇するほど心配した貴実子は、 「気を許したと思ったら、逃げだして、逢引するとは!あんたは、あばずれパープルや!」と、にゃん紫に、流行らないスナックのお姉さんみたいな源氏名を付けました。でも、無事に帰ってきてくれたことを、何よりも喜んだのも貴実子でした。
この記事を書いた人
余田由香利
事務局では、経理と会員事務を担当。
時々、にゃん紫にチュールをあげるのを楽しみとしています。