文庫だより玄武町余聞

高校での和歌授業

京都府立朱雀高等学校の場合

和歌の文化を新しい世代へ

今年も出張授業のシーズンがやってきました。

通年で和歌の指導を行っている学校もありますが、多くは秋の時期に数回の特別授業をさせていただいております。

出張先は京都府下の高校がほとんどですが、依頼を受けて大阪や千葉の学校でも少し指導を行っています。

京都府立朱雀高等学校での和歌指導

今回は、京都府立朱雀高等学校での和歌指導についてご紹介します。

朱雀高校は世界遺産二条城の西向いに位置する男女共学の高校で、筆者の祖母布美子、伯母貴実子の出身高校でもあります。

(祖母の時代には、京都府立京都第二高等女学校という名称でした。)

今年は、2年生50人の生徒さんが和歌の授業を受けてくれました。

1回目の授業で和歌を詠み、2回目には儀式を体験するという、なかなかにハードな内容です。

授業風景 窓の外には二条城が見える

今回の題は「紅葉」。

木や山が色づく美しい様子や、それらが散りゆく寂しさを詠みます。

和歌に触れたことの無い生徒たちにとってはいきなりで難しかったかもしれません。しかも今年は異常気象で、10月下旬、まだ校庭の木々は色づいていませんでした。これでは景色を見ながらの制作は不可能です。

しかし和歌は、皆が頭の中に持っているイメージを言葉であらわすもの。実際の状況にとらわれることはありません。

スマホやタブレットなどで、「紅葉」と聞いて思い浮かぶものを検索してイメージを膨らませるように伝えると、生徒たちの筆は一気に進みました。

さすが、そうした情報収集には慣れていますね。

このようにして、講義の中で紹介した「紅葉」の景色や言葉、和歌だけではなく、生徒が自分で見つけてきた「紅葉」と「和歌」のイメージとをあわせ、一人一首以上の和歌を詠む事が出来ました。

参考資料を集めて、イメージを膨らませる
和歌の制作

体験 和歌の儀式~足のしびれを我慢して~

2回目の講義は、いよいよ儀式の体験です。

1回目で詠んだ和歌に添削を受け、筆で短冊に書きます。

和歌は独自の折り方で作った用紙にやはり独自の書き方で書付けます。添削の書き方にも、決まりがあります。すべて数百年前から脈々と続く方法です。

体験は京都アスニー(京都市生涯学習総合センター)の一室で行いました。

畳が敷かれた立派なお部屋に上がり、生徒たちはすでに緊張した様子です。

儀式は、まず場に入るところからです。

2人ずつペアになり、敷居を越える際には膝行(しっこう)といって、座ったまま膝を使って入ります。

膝行(しっこう)の指導
順に席に着いていく

所役(しょやく)が、皆に硯箱と紙を配ります。

この時も決められた所作(しょさ・作法のこと)がありますが、初めての体験に四苦八苦です。

所役に選ばれた人も大変ですが、道具が配られる間、正座でじっと待つ側も大変です。

硯箱を配る所役
一斉に墨を擦る

短冊は下に置いてではなく、手で持って書きます。

ただでさえ慣れない筆を用いて宙で書くこの方法は、現代人にはとても難しいのですが、皆、頑張って挑戦してくれました。

真剣です。

短冊に和歌を書く

披講

最後に、冷泉流の調べで和歌を詠み上げる披講を行いました。

和歌は言葉の美しさを、声に出して耳で楽しむ文化です。

京都に残った冷泉家で行っている披講の音程は、現在の宮中の歌会始めや他の和歌の流派とも異なるものです。

生徒さんにこれを体験していただけたことを、大変うれしく思いました。

今回の体験が生徒たちの記憶の片隅に残り、この先の人生を少し色彩豊かなものに出来れば幸いです。

これからも伝統的な和歌の文化が新しい世代に伝わるよう、活動を広げていきたいと考えております。

この記事を書いた人

野村渚

学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
ここでの勤務はまだ1年のひよっ子。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。

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