文庫だより玄武町余聞

七夕の行事、乞巧奠を舞台で

ゆったりとした時間を味わいます

雅に、厳かに

旧暦7月、七夕の行事「乞巧奠」を執り行いました。

乞巧奠は、技芸の上達を星に願う行事。奈良時代に中国から伝わったと言われています。

和歌の家、冷泉家ではとりわけ大事にしてきた行事です。

例年は冷泉家邸宅内で行うのですが、今年はロームシアター京都(サウスホール)でさせていただきました。

乞巧奠は、蹴鞠から始まります。

蹴鞠を行う「鞠場」を形作る四隅の竹には、生の竹が使用され、堂々とした佇まいでした。

蹴鞠の装束や儀礼、作法にはいくつもの伝統的な決まりがあり、その制約の中で蹴鞠を楽しみます。

場面は屋外から屋内へと移り、夕暮れの薄暗い明かりのもと雅楽が始まります。

鳳笙(ほうしょう)、篳篥(ひちりき)、竜笛(りゅうてき)、琵琶、筝などの音色が響き、ゆったりと、それでいて荘厳な調べに会場が包まれました。

雅楽は、楽器による演奏だけではなく、朗詠も披露されました。朗詠曲は「二星(じせい)」。乞巧奠で古くから歌われてきた定番の曲です。

雅楽が終わり、披講(ひこう)へ移ります。

当主をはじめ、冷泉家和歌会の門人が詠んだ和歌7首を二星(たなばた)に手向けました。

本来ですと、二星を祀る祭壇「星の座」に向かって披講を行うのですが、今回は舞台での事。客席側へ向かっての披講となりました。

最後は「流れの座」です。

天の川に見立てた白い絹を隔て、男性は彦星に、女性は織姫になりきって、七夕の恋の歌を詠み交わします。

一年(ひととせ)に一夜(ひとよ)限りの逢瀬を表現した、何ともロマンティックな夜。観客の皆様はどのようにご覧になったでしょうか。

この記事を書いた人

野村渚

学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。

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