重文に指定された民家
先日、福井県福井市で、特定非営利活動法人「重文民家の集い」の総会が開催されました。
重文民家の集いは、国指定重要文化財の民家の所有者で作っている団体で、冷泉家時雨亭文庫も所属しています。
(完全な形で現存する唯一の公家屋敷、冷泉家住宅は重要文化財です。)
いざ非公開の民家へ
今回は、総会後の見学会から参加しました。(総会は歌会のため欠席でした。すみません。)
見せていただけるのは、福井県の「坪川家住宅」と「相木家住宅」です。
朝早く福井市を出発して、一日のバス旅です。
坪川家住宅は、中世末期に建てられた茅葺屋根の民家で、豪雪地帯の豪族の暮らしぶりを伝える貴重な建物です。
また、庭は国の登録記念物に指定される池泉回遊式庭園です。(すべて公式HP参照)
豊富な山の湧水を引いた池に咲く菖蒲の花は特に高名で、季節には多くの人が訪れるそうです。
水車によってコントロールされた湧水は、縦横無尽にひかれた水路によって、庭ばかりか家の中にも取り込まれ、日々の生活に使えるようになっています。
今でも毎日、囲炉裏で火が焚かれて茅葺の屋根を燻します。
管理なさっている坪川さんによると、こうして煙を充満させることによって室内が燻蒸され、茅葺屋根が長持ちするそうです。
坪川家住宅では、隣接するカフェでお蕎麦やお茶などがいただけるほか、コンサートなどのイベントもされています。(詳しくは坪川家住宅公式HPをご覧ください。)
囲炉裏の炎に癒されて、次は相木家住宅に移動です。
相木家住宅は、江戸中期に建てられた入母屋造、茅葺屋根(後年の増築のため現在は一部瓦葺)の邸宅です。
豪雪地帯の庄屋級の邸宅建築らしく、急こう配の大屋根が特徴的です。
玄関から入ってすぐ、高い天井には米などを備蓄する大きな納戸があり、また「上段の間」の側面には複数本の槍をかけた「造附槍掛」があり、かつての武家の威容を偲ばせています。
その下には槍掛も
※相木家住宅では現在公開を行っていません。
重文民家の悩み
重文民家の集いでは、建物とそれにまつわる文化や環境を維持管理、活用して後世に残すため、日々努めています。
ですが、そのほとんどが個人の所有する民家ですから、大変です。
お寺や神社、お城など一般に開かれた場所ではないため、通常非公開のところがほとんどです。
維持管理にかかる資金や、担い手、文化を継承するための情報発信と教育普及などすべてのものが不足しています。
さらに、これらの問題のほとんどすべてが所有者個人の手に委ねられています。
重文民家の集いでは、これらの問題解決に向けて皆で知恵を出し合っています。
支援者や、地域の人たちに支えられながら、今回見学させていただいたような「古民家のある日本の原風景」を失うことが無いよう、働きかけていきたいと思います。
この記事を書いた人
野村渚
学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
専門は日本画と文化財保存修復。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。