土蔵の壁は、何度も何度も土を塗り重ねて作ります。ですが土壁、特に荒壁はとても水分を吸収しやすい素材なので、そのままでは上から壁土を塗り重ねることが出来ません。吸水を穏やかにするための処理を行ってから作業に取り掛かります。
吸水止め処理には古来より、海藻類を焚いて作る糊を使用します。ここでは、銀杏草(ぎんなんそう)や角又(つのまた)などを煮出して抽出したものを採用しました。海藻のネバネバ成分が下地の表面に留まり、水分の吸い込みを止める役割を果たします。乾燥と共に固化する土壁をうまく扱うための伝統的な知恵です。
吸水止め処理を施した箇所では、壁土の水分が失われずしなやかに伸びているのがわかります。
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この記事を書いた人
野村渚
学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
この4月から勤務し始めたひよっ子。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。