北の大蔵 新設工事進捗報告中塗り [2]

「用」と「美」の共存

数百年先を見据えた蔵造り

下塗りの荒壁が十分に乾いたら、塗り厚を確保しつつ頑強な下地を得るため、中塗りをします。 荒壁を塗った後の壁の表面は、下地の貫や木舞の形に添って凹凸があります。この凹凸を、中塗りの段階で平滑に整えます。

荒壁土塗布前後の様子。
貫や木舞(竹で組んだ下地)に沿って凹凸があるのがわかる。

通常、土蔵の内部の壁は凹凸が残ったまま仕上げるのが普通ですが、「北の大蔵」は大きさも巨大かつ、重要な物品を収めることが決まっていますので、このような処理をすることになりました。

まずは、凹部分を壁土で埋める「底埋め」を行います。この壁土に混ぜるワラスサには4.5cm程の長さのものを使用します。荒壁用の土では10cmほどでしたから、それだけ土の粘りも変わります。

ワラスサ

凹部分を凸部分と同じ高さまで埋めるので、たくさんの壁土を用意せねばなりません。さらに職人の作業量も増え、盛り上げるためには高度な技が必要ですので、労力も時間も、金銭的にもコストの大きい工程です。

しかし、この工程を入れることで、温湿度の変化や振動に強く、防水効果の高い壁になります。しかも平滑で美しい景観を得ることが出来ます。

手間暇をかけ良いものを作ることで、今後数百年先にわたってここに在り続ける。ここではそのような建物を作っています。

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この記事を書いた人

野村渚

学芸課長 第24代当主為任・布美子の次女久実子の次女。
この4月から勤務し始めたひよっ子。
子供の頃からの耳年増で、なんとか日々をしのいでいます。

文庫だよりLetter From Shiguretei Library